この事例の依頼主
60代 男性
相談前の状況
厚生年金に加入してほしいと折に触れて会社に要求してきたのにこれを無視され、不加入を続けられた結果、厚生年金の受給要件を得られなくなったとする60代の男性の相談を受けました。男性の勤務先は株式会社であり、従業員を被保険者として厚生年金に加入することが法律で義務付けられていました。しかし会社は、自社の保険料負担を回避する目的で男性の要求をごまかし続けてきました。
解決への流れ
男性はこの会社に入る前に厚生年金加入月が120カ月ほどありました。当時は年金の受給要件が25年(300か月)以上とされていて、男性の場合、15年(180カ月)ほど不足していました。会社の意図的な不加入によって得られなくなった損害を計算して、会社に対し1000万円弱を請求する訴訟を提起しました。満額とはいきませんでしたが、未払いだった男性の社宅使用料50万円を免除し、さらに会社に300万円を支払ってもらうという裁判上の和解が成立しました。
この事件は、損害金の計算が大変難しかったのを覚えています。しかし知り合いの社会保険労務士の協力を得て不加入によって得られなくなった損害金を計算しました。裁判所は、終始男性に同情的でした。会社との対立は激しいものでしたが、男性と経営者それぞれの本人尋問をやった末、最終的に和解という解決になりました。