犯罪・刑事事件の解決事例
#別居 . #婚姻費用

算出が難しい婚姻費用に関するご相談

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澤田 剛司 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人若井綜合法律事務所新橋オフィス
所在地東京都 港区

この事例の依頼主

40代 女性

相談前の状況

会社員である40代の女性から離婚問題に関するご相談を受けました。具体的な相談内容は以下のとおりです。私達夫婦は20歳以上年齢が離れており、私はまだ40代半ばですが、夫は既に定年退職しており年金を受給しています。思えばこれまでの20年ほどの結婚生活はほぼ円満に続いていたと思います。しかし、夫が退職をする1年ほど前から、夫の口から「定年退職をしたら俺はお前に捨てられるのか」などの言葉が出るようになり、うんざりしておりました。夫もそこまで本気で捨てられるとは思っていないと感じましたが、どうにも不安が拭い切れずにいるようでした。そして、私のほうとしてもどうすれば夫に信用してもらえるかが分かりませんでした。ですが、今考えるともっと「年の差が大きい」という事に目を向けるべきだったのかもしれません。どう言いつくろったところで、まず間違いなく夫のほうが先に旅立つことになるので、その辺りの事を私ももっと真剣に考えて話をしておくべきだったと思います。我が家には高校2年生の娘がいますが、よく彼女に「お互いいい歳して、何でそんなよく分からないことで喧嘩してるの……?」と呆れられていました。ただ、娘の言うように「喧嘩をしている」という意識はありませんでした。むしろ、単純な喧嘩だったほうがお互いの気持ちをぶつけ合うことができて、まだ良かったのかもしれません。ちなみに私自身は娘と仲が良いと思っていますが、夫と娘は最近あまり話していません。ただ、それもごくごく一般的な「父親に素直に接することができない娘」の範疇に入っていると思うので、あまり問題だとは感じていませんでした。妻である私とすれ違っていて、その上で娘にも煙たがられているのでは夫の心がすり減っていくのも仕方がありません。普通に考えれば、家族と仲が良くないというのはそれだけで悲しいことです。その辺りの事を、私のほうからもっと娘に言って聞かせるべきだったと感じています。また、私のほうもちゃんと夫に寄り添うことができたかと思うと自信がありません。何より、夫の不安を埋めることはできていなかったと感じています。そして、ある日夫が真剣な顔をして「しばらく一人で色々と考えたいから別居させてくれ。俺が出ていくから」と言われてしまいました。「なんて悲しいことを言い出すのだ」という気持ちがありましたが、その反面、「しばらく顔を合わせないというのは気が楽かもしれない」とも感じてしまいました。ですが、本当に別居してしまえば、そのままズルズルと離婚まで到達してもおかしくないと思ったので、すぐには返事ができませんでした。「婚姻費用を払ってほしい」と言っても夫にうやむやにされてしまうので困っています。娘はアルバイトをしております。率直に言って私の年収は高くはないので、娘のバイト代があって、なおある程度節約していかないと生活が成り立たない状況となっています。貯金を全くしないのであればもっと楽になりますが、私や娘の将来を考えると貯蓄をしないというのは避けたいです。そして、率直に言って今回の件は、夫よりも私と娘に責任があると思うので、「お金の要求をしないで、当面は夫の好きに生活してもらった方がいいのでは」という気持ちもあります。夫が娘のために全く金銭的な補助をしないというのは長期的な視点で考えると良くないことだと思いましたので、相談をさせていただきました。※これらの内容は個人を特定できないよう、相談者の承諾を得て編集し載せております。======

解決への流れ

どういう流れになるのか分かりませんでしたが、弁護士さんに親身になって対応していただけたので安心しました。まず弁護士さんを介して、夫に改めて正確な年金額を教えてもらうことができました。順序立てて話をすれば、すぐに済むことだったのだと思い、反省しています。今振り返ると、私だけで夫と婚姻費用の話をしていたときは、私が冷静さを失ってしまっていたので、夫が素直に応じたくなくなるのも仕方がない話だったような気がします。それに、私も夫も「婚姻費用」というものの存在自体を知らず、「とにかく夫として娘のためのお金を出さないのはおかしい」とだけ主張していたのも良くなかったと感じています。そして、婚姻費用の算出を弁護士さんに行ってもらいました。相手の収入金額さえ分かれば、たとえ年金収入であっても計算するのは難しくないのですね。と言っても私自身で計算をする自信はなかったので弁護士さんに任せましたが。そして調停を行いました。婚姻費用における一般的な計算式を使って計算したので、夫のほうからの減額要請もなく、すぐに話がまとまりました。ちなみに、後で夫とプライベートで話す機会があったのですが、「俺は俺で生活があるから無理はできない。だが、本当に困ったらもっと金の補助ができるから言ってくれ。貯金もそれなりにあるから」と言ってくれました。私が知る限りでは、夫に貯金はほとんどありません。優しい嘘です。今考えると全然趣味もありませんでしたし、「娘の成長を見守ることができればそれでいい」という人でした。それなのに、私のほうは趣味に比較的お金を使っていたので申し訳ない限りです。元々ちょっとしたすれ違いで別居する事になっただけなので、できればもう一度一緒に生活することができればと考えています。何より娘が「別にお互いに嫌い合っているわけじゃないんだから、長くても1年くらいで戻ってきて欲しい」と言っていますので。それに「私が追い出してしまったようなものだ」と後悔しているようです。どうなっていくのかは今のところ分かりませんが、夫に少しずつ連絡を入れて、戻ってきてもらいたいと考えています。※これらの内容は個人を特定できないよう、相談者の承諾を得て編集し載せております。

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澤田 剛司 弁護士からのコメント

婚姻費用に関してですが、「婚姻費用を出す側」からの承諾を得ることがとても大事であると考えています。なぜなら強引に話をまとめてしまうと、継続的な支払いをしてもらうことができなくなる恐れがあるからです。本件についてはそもそも「双方が冷静に話し合う」ということが全くできておりませんでした。しかし依頼者様のお話をお聞きし、「当事者同士で相談することは可能」と判断しましたので実行して頂きました。すると、私が考えていた以上に話がスムーズにまとまりそうな予感がいたしました。それでも調停まで発展しましたが、「婚姻費用を出す側の納得」が迅速に得られました。ただし、年金収入のケースにおける婚姻費用に関しては、いわゆる「算定表」では対応できないので、計算式を使わせていただきました。