この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
本件の被相続人は依頼者の父、相続人は長男と再婚配偶者(以下「相手方」といいます)の2名でした。長男は未成年であったため、母(被相続人の元妻、以下「依頼者」といいます)が法定代理人親権者として対応をしておりました。相手方には当初から代理人弁護士がついており、代理人を通じて遺産分割及び保険金請求の提案がなされていました。しかし、相手方の提案が自宅不動産は全部相手方が取得する、保険金は遺産分割が完了するまで相手方代理人が預り保管するという一方的な内容であったため、依頼者は対応に苦慮し、弊所に対応を依頼されました。
解決への流れ
弊所は受任後、相手方代理人に法定相続分による分割を提案しましたが、回答がないことから、速やかに遺産分割調停を申し立てました。遺産分割調停では、相手方から自宅不動産は夫婦が共同で形成した財産であるから、2分の1の持分は相手方固有の財産であり遺産に帰属しないこと、遺産に帰属する持分2分の1は相続人2名が各2分の1で取得するとの主張がなされました。自宅不動産は被相続人の単独名義で登記されていたこと等から、相手方の主張は到底受け入れられませんでした。そこで、依頼者は、調停を取り下げて、遺産確認請求訴訟を提起しました。遺産確認請求訴訟では、一審で勝訴し、控訴審においても一審の判断を維持するとの心証が示され、これを前提に遺産分割も取り込んだ和解により解決しました。
本件は遺産分割調停申立後に交渉段階では主張されなかった遺産帰属性に関する主張がなされたため、調停を取り下げて、遺産確認請求訴訟を提起するという経過をたどりました。調停を取り下げて遺産確認請求訴訟を提起する場合、手続が2本になることから、遺産分割調停内で遺産帰属性も含めて協議をするという発想もでてきます。しかし、本件の相手方の主張には無理があったことから、速やかに調停を取り下げ、遺産確認請求訴訟で遺産帰属性の判断を仰ぐ方が結果的に早期解決につながると判断しました。結果的には、一審で勝訴し、控訴審では、一審の判断を前提にして、遺産分割まで取り込んでの和解が成立したことから、再度の遺産分割調停を申し立てる必要もなく、想定よりも早期に解決しました。本件は遺産帰属性が争われた場合の手続選択の参考になると思われますのでご紹介いたします。なお、本件の詳細は以下の事例紹介をご参照ください。https://www.souzoku-koshigaya.net/jirei/jirei4/post_174.html