この事例の依頼主
60代 女性
相談前の状況
専業主婦の依頼者は、公務員の夫と離婚した後、夫の財産分与を生活資金にして余生を送ろうと考えていました。ただ、ギャンブル好きの夫には、多額の借金があり、預金はほとんどありませんでしたが、数か月後に控える定年退職の際に、数千万円の退職金を受け取る予定でした。依頼者は、この退職金から財産分与を受けたいと考えていましたが、夫が退職金を受け取れば、すぐにギャンブルで浪費したり、借金の返済に充てたりすることが目に見えており、何とかこれを阻止して欲しいということで依頼を受けました。
解決への流れ
まず、退職金の仮差押え手続きをとることにしました。これは、裁判等で財産分与の金額が決まっても、相手に財産が残っていなかったら強制執行できませんので、予め相手の財産を確保してもらうよう裁判所に申し立てる手続です。なお、退職金の場合には、支給額の4分の1までの範囲で仮差押えが可能です。夫が定年退職するまでに仮差押えの決定をもらわなければならないので、早急に申立書類を準備して、仮差押えの申立てをしたところ、無事、退職金の仮差押えが認められました。その後、夫に、退職金の一部が仮差押えられていることを伝えて財産分与の交渉に臨んだところ、夫側は観念して、当方の主張するどおりの財産分与額を支払ってくれました。
このように、財産分与の支払者が、資産を隠したり、浪費したりする可能性がある場合には、資産を仮差押えをすることでそのリスクを防ぐことができます。また、仮差押えをすることで、交渉を有利に運ぶこともできます。ただ、仮差押えは、申立人が、裁判所が決定した額の担保金を納めなければ、効力は発生しません。この担保金の額は、ケースバイケースですが、100万円以上の額になることが多いと思われます。ですので、仮差押えを申立てる場合には、予め十分な資金を用意しておく必要があります。