この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
保険会社に勤務する方からのご相談で、給与の大半を営業成績に応じた手当が占めているため収入が不安定であり、顧客の接待費や生活費の不足を借入で補ううち、住宅ローン以外に1000万円以上の債務を負ってしまい、相談時には既に住宅ローンの返済も滞っているという事案でした。個人再生手続により債権額の5分の1を5年間で分割弁済することとした場合、配偶者の収入とあわせても、住宅ローンについては利息程度の返済しか見込めない状況であり、個人再生での整理の実現可能性は相当に低いように思われました。当該住宅ローンの最終弁済期における債務者の年齢は67歳であることから、当面、利息しか返済しないとすると、70歳を相当年数超える時期まで返済期間を延長することとなり、住宅ローン債権者の同意を得ることには困難が予想されたからです。しかし、ご本人は、保険営業の仕事と自宅とを維持できるよう、できる限り破産は避けたいとの意向でした。
解決への流れ
ご本人には困難性を充分説明したうえで、ご本人の希望に従って個人再生申立の方針で受任しました。住宅ローン債権者に対してリスケジュールの協議を申し込み、家計収支の状況や予定している再生計画の内容について、多数の資料を添えて詳しく説明したところ、当方の希望した条件を前提とするリスケジュール案を作成してもらうことができました。リスケジュールの結果、住宅ローンの返済期間は8年延長され、最終弁済期における債務者の年齢は75歳であることになりました。リスケジュール後、個人再生の申立を行い、無事、再生計画の認可を得るに至りました。
この事案で個人再生申立が奏功するためには、同意型の住宅資金特別条項を利用するか又は予めリスケジュールを行ったうえで申立を行うかする必要があり、いずれにせよ住宅ローン債権者の同意を得られなければそれまで、という状況であり、当職自身も不安を覚えながらの受任でした。幸い、当職の説明に対して住宅ローン債権者の理解を得ることができ、リスケジュールに応じていただけた結果、個人再生による整理を実現することができました。個人再生が無理なら破産せざるを得ず、自宅と保険営業という職業とを失うこととなる依頼者を救うことができ、安堵しました。このようなケースがありますので、既に住宅ローンの支払いを遅滞している方であっても、その住宅ローンの最終弁済期における年齢が相当に高齢であってさらに延長してもらうことに相当の困難が見込まれる場合であっても、個人再生は、なお債務整理の選択肢の1つとして検討すべきものといえるでしょう。