この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
相談内容:婚姻中から傍若無人な振る舞いを行い,自分や子供に対して暴言や暴力(首を絞めるなど)を日常茶飯事に繰り返してきた配偶者と離婚したい。また,今後絶対に子供と面会させたくない。
解決への流れ
受任後すぐに着手。前任から引き継ぐ形で離婚調停の代理人に就任し,相手方から申し立てられた面会交流の調停・審判にも対応することとなった。離婚については双方異存がなかったため,財産的な取り決めを行う形で早期に決着がついた。問題は面会交流であるが,調停では決着がつかず,審判手続において裁判所の判断を仰ぐこととなった。①第1審の家庭裁判所は,婚姻中の配偶者の振る舞いや未成年者が面会を拒絶していること,精神科医が意見書において子供がPTSDを発症しており,面会は避けるべきという意見を陳述していることを認定したものの,数か月に一度の面会は行うべきという審判を下した。このため,これに対して私の方で即時抗告を行った。②抗告審である高等裁判所においては,さらに追加で提出した医師の意見書においても,面会において生じる未成年者への心的外傷のリスクが多大であるという記載がされていることを重視いただき,第1審の家庭裁判所の判断を覆して,相手方の申し立てを棄却する旨の判断を下した。
裁判所は,別居中の親と未成年者との面会交流に積極的で,特段の事情が無ければ月1程度の面会交流は面会交流の裁判や審判において認められるのが通常です。別居したとはいえ,実親との交流が子の福祉に資するという理由です。しかし,事情によっては実親との面会を強制的に実現することが未成年者のためにならないこともあります。今回は実にいろんな角度から如何に相手方との面会交流を認めることが子供の福祉にそぐわないかということを主張,立証し,その結果として,高等裁判所において未成年者と相手方との面会交流を認めない判断をいただきました(家庭裁判所では数か月に一度とはいえ,面会交流を行うべきとう判断が出てしまいましたが)。決め手になったのは未成年者の治療にあたっていた医師の公正な立場からの意見書であり,改めて客観的な証拠資料収集の重要性を認識することになった事件でした。