この事例の依頼主
30代 女性
両親が離婚して、父とは数十年会っていないかったという、30歳代女性の相続人から、「何をすべきか全くわからない。」という相談を、当事務所で受けました。この相続人は、ご自身が10代前半のころに両親が離婚し、主に母親と一緒に暮らしていました。20歳代で結婚し、独立しましたが、父との付き合いはほとんどなく、父が亡くなって数週間後に、父方親族から、父が亡くなったということを聞きました。父には借金があるらしい、とは聞きましたが、そのほかのことは全く分からず、相続を経験するのも初めてだったので、市役所が行っている無料の法律相談に行きました。しかし、短時間の法律相談では、身になる答えは得られず、「相続放棄したほうがいい」「限定承認がいいと思う」などと専門用語が弁護士の口から発せられる度に不安になる、という状況でした。結局、この相続人の方は、ウェブサイトを通じて当職を知り、相談に見えました。
まずは、相続とはどのようなものか、分かりやすく、じっくりと説明させていただきました。その後、既に判明しているお父様の生活状況や財産・負債についてお話ししていただきました。すると、負債はほとんどが住宅ローンであり、団体生命保険で弁済できそうなことが判りました。さらに話をきくと、両親が離婚する際に、財産分与で父から母に譲渡した自宅土地建物が、まだ登記名義を父にしたままだったことが判りました。この点について、母に負担なく土地建物を残すことが、相続人の希望であったので、その意思に沿った解決をご提案し、実現することができました。相続手続のほぼすべてを、当職が代理人として行い、すべての相続手続が終了した際には、御依頼者は大変明るく、すっきりしたお顔をされていました。御依頼者は、お母さまの土地建物を守れたのが、最もうれしい様子でした。
被相続人に、借金がある場合でも、相続の承認放棄は、いろいろな角度から、慎重に検討すべきです。このご相談者は、地元の市役所の法律相談では限定承認しか道はないという趣旨のことを言われたそうですが、財産と負債の調査をしてからでないと、分からないこともあります。本件では、単純承認して、正解だったということです。また、お仕事をお持ちの方は、日々忙しいので、相続手続を行う時間も、あまりないというのが実情です。弁護士に依頼することで、相続人の物理的・精神的負担が軽くなります。