犯罪・刑事事件の解決事例
#慰謝料

相続財産である家屋をめぐって、被相続人の内縁の妻と和解した事例

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関 範子 弁護士が解決
所属事務所やよい共同法律事務所
所在地東京都 港区

この事例の依頼主

30代 男性

相談前の状況

私の父は、20年ほど前にAという女性と不倫をし、それが原因で私の母と離婚しました。その後、父は、父名義の家でAと同居していましたが、婚姻届は出していませんでした。昨年、父が死亡したため、唯一の相続人である私が後処理に奔走していると、Aから、「ずっとこの家に住み続けたい。」と言われました。私にとって、Aは、私の育った家庭を壊し、私の母を苦しめた女性ですので、私が相続した家から出て行って欲しかったのですが、既に高齢となっているAには、他に住むところを見つけるのが困難であることも理解はできました。そのため、家賃を払ってくれるなら、数年程度は住んでもらっても構わないと言ったところ、Aもこれを了承したので、早速、不動産屋さんに頼んで、家賃の相場額を見積もってもらいました。ところが、私が家賃の相場額を伝えると、Aは突然態度を翻し、そんな金額は払えない、固定資産税は払うから、死ぬまで住みたいなどと言い始めました。また、Aは、生前、父に500万円を貸しているので、それを返してもらいたい等と言い出しました。私は今後どのように対応したらよいかわからず、弁護士に相談しました。

解決への流れ

私の希望としては、Aにはすぐ退去してもらうか、そうでなければ、毎月家賃を払って居住すること、また、Aが父に貸したという500万円については、私が支払わなくても済むようにしたいということでした。この点、退去の可否について、弁護士によると、父の内縁配偶者であるAには、父の遺産について相続権はないものの、被相続人名義の家屋に住んでいた場合、内縁関係は社会的に承認された夫婦共同生活体であることから、相続人が建物明渡請求訴訟を提起した場合、事情によって、相続人による権利濫用とみなされて棄却されたり、あるいは、被相続人と内縁配偶者の間に、被相続人の死後、内縁配偶者が死亡するまで、当該建物を無償で使用するという黙示の使用貸借契約が締結されていたと認定されることがあるということでした。また、Aが父に生前貸したという500万円については、そのような貸金が本当にあったとすれば、確かに相続人である私が父の債務を相続しており、相続放棄できる期間も過ぎている以上、返済の義務を負う可能性があるとのことでした。そこで、建物については、こちらからAに対し建物明渡請求訴訟を提起し、完全な明渡しを求めつつも、賃料を払ってもらって居住は認めるという内容での和解も念頭に置くことにしました。また、父に貸したという500万円については、何の証拠も提示されていませんでしたので、Aが具体的に返還請求訴訟を提起してきたら、対応するということに方針を決めました。そこで、早速、Aに対する建物明渡請求訴訟を提起したところ、案の定、すぐにAが500万円について返還請求訴訟を提起し、これらは同一の裁判官が担当することになりました。訴訟では互いの弁護士が激しく主張をたたかわせ、私も500万円が本当に貸金なのかを調べるため、父名義の古い通帳を弁護士にチェックしてもらう等、対応に協力しました。最終的には、当方の希望や、裁判所からの提案等も踏まえた上で、私がAに当該建物を無償で貸すこと、修繕の必要が生じた場合はAが費用を負担すること、また、これまでの経緯に鑑み、Aが解決金として毎月1万円ずつ私に支払うこと等を内容とする和解が成立しました。Aに建物から出ていってもらうことはできませんでしたが、私がAに支払をする必要はなくなり、また、家賃はもらえませんが、解決金名目でAから毎月1万円ずつが支払われることになりましたので、弁護士に依頼して良かったと思っています。

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関 範子 弁護士からのコメント

本件では、建物明渡請求訴訟については、予想通り、Aの弁護士から、相談者の請求が権利濫用であるとか、相談者のお父様とAの間に黙示の建物使用貸借契約があった等との主張がありました。他方、貸金返還請求訴訟については、確かに、A名義の口座から、相談者のお父様名義の口座に、合計500万円が振り込まれていることがわかりました。しかし、この500万円は、お父様名義の家のローン返済のためにAが提供したお金だったようでしたので、当方は、Aからの貸金ではなく、Aが内縁配偶者として、婚姻費用として負担したお金であって、相談者が返還するいわれはないと反論しました。しかし、訴訟が進むにつれ、判決ならば、当方の建物明渡請求は認容されそうだが、貸金については、もしかするとAの請求が一部認容されてしまう可能性が見えてきましたので、改めて相談者の希望を確認したところ、ともかく自分がAに支払をしなければならなくなるような事態は避けたいとのことでした。そこで、裁判所の提案なども考慮し、上記のように、相談者はAに無償で建物を貸し、修繕費はAが負担すること、また、Aは解決金として毎月1万円を相談者に支払うという内容で、和解を成立させ、相談者がAに対して支払をせずにすむようにしました。