犯罪・刑事事件の解決事例
#相続人調査

相続人がいなくなった建物の管理責任が問題となる事例

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関 範子 弁護士が解決
所属事務所やよい共同法律事務所
所在地東京都 港区

この事例の依頼主

30代 男性

相談前の状況

私はAハイツの管理を委託されている不動産会社の社員です。この度、Aハイツのオーナー様が亡くなられ、相続人の方々が全員相続放棄をされました。ちょうどそのころ、Aハイツは、築年数が15年に及び、屋根と外壁の改修工事が必要な状態に至っていることがわかりました。本来ならば、オーナー様にその旨報告し、改修工事について契約をさせていただく必要があるのですが、上記のように相続人の方々が全員相続放棄されたことによって、Aハイツの所有者がいらっしゃらない状態です。このような場合、このまま弊社が管理を続けなければいけないのか、改修工事を勝手にしてもよいのか、また、万一、改修工事をしないまま、建物の崩壊などが発生してしまった場合、弊社が何らかの責任を負わねばならないのか、どうすればよいのかわからず、困ってしまいました。

解決への流れ

弁護士に相談したところ、速やかに相続財産管理人の選任を申し立てるのが良いとのアドバイスをいただきました。

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関 範子 弁護士からのコメント

相談者の会社と、Aハイツのオーナーとの間には、当該ハイツについて管理委託契約が締結されていましたが、不動産の管理は法律行為以外の事務(=準委任)に当たるため、民法656条により、委任についての規定が準用されます。この点、委任者であるオーナーの死去により、相談者の会社との間の管理委託契約は、終了します(民法653条1号)。この場合、民法654条は、委任が終了した場合においても、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人もしくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない、と定めていますので、改修工事の必要性が一刻を争うようなものであれば、「急迫の事情」がある場合に該当する可能性があり、相談者の会社は改修工事を施さねばならないことになります。しかし、本件のオーナーには、相続放棄により、相続人がいないわけですから、Aハイツの取扱いについては、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらい、その人に委ねることになります。この点、相談者の会社は、Aハイツの管理受託者としての立場により、「利害関係人」として、オーナーについて、相続財産管理人選任の申し立てをすることが可能です。なお、相続人が全員相続放棄をしたとのことですが、民法940条1項により、相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない、と規定されていますので、危険個所回避のための改修工事を、相続財産管理人が選任されるまで待つ余裕がない場合は、相談者の会社から元相続人と連絡を取り、同意を得る等して施工に取り掛かる必要があるかも知れませんが、その場合の費用の回収等について、後々トラブルになる可能性があり得ますので、なるべくならば、相続財産管理人を選任し、その人と連絡を取って進めるようにした方が、会社のリスク軽減のためには、良いでしょう。