2184.jpg
高校生101人が旅客機を降ろされる 「搭乗拒否」の判断基準は?
2013年06月15日 14時35分

米国で高校生らが集団で旅客機の搭乗を拒否されるという出来事があり、国内外で話題になっている。

CNNの報道によると、6月上旬、米サウスウエスト航空のニューヨーク発アトランタ行きの便に、私立高校の生徒101人と教員8人が搭乗した。しかし、生徒たちは客室乗務員の指示に従わず、座席から立ったり、携帯電話を使用したという。

機長が注意しても聞かなかったため、最終的には109人全員が機内から降ろされた。その後、生徒らは同社が手配した別の便に複数に分かれて搭乗できたという。教員らは、指示を聞かなかったのは一部の生徒だけで、全員を降ろす必要はなかったと主張しているそうだ。

かなり異例の事態だったことがうかがえるが、日本でも2011年、出発前の機内で「(荷物に)爆弾が入ってるから気をつけてね」と冗談を言った男性が搭乗拒否になっている。では、このような「搭乗拒否」はどのような基準で判断されるのだろうか。旅行法や航空法の実務に詳しく、搭乗拒否についての論文も書いている金子博人弁護士に聞いた。

●「搭乗拒否」については機長に幅広い権限がある

「飛行機では『疑わしきは搭乗させない。降機させる』のが原則です。航空法では、航空機の乗客の搭乗を拒否したり、搭乗後に降ろしたりする『運送の拒否』については、機長に権限が集中しています(73条の3)。

航空機の安全を害するもの、人や財産に危害を及ぼすもの、機内の秩序規律に違反するものなどに対しては、機長は『降りろ』と要求できます。さらに、拘束したり、搭乗を抑止する措置をしたり、降機させたりする権利と義務を負っています。必要であれば、航空機を着陸させる権限も機長にあります。このような規定は各国にもあって、各種の国際条約も、それを前提にしています」

機長にそこまで大きな権限がある理由は?

「航空機がそもそも脆弱な運送手段だからです。安全運航は絶対ですし、機内は閉鎖空間で逃げ場もありません。機内の規律はとても重要で、乗務員の指示に従わないものは、そもそも乗せるべきではないのです。

たとえば『爆弾が入っている』などという発言があったとしたら、それがウソだと即座に、かつ確実に確認できない限り、降ろされるのは当然だと言えます。また、騒いだ高校生についても、『他の生徒が規律に従うかどうか』を、機長が即座に、かつ確実に確認できない限りは、降ろされてもやむを得ないでしょう」

降ろされた乗客には、不満が残るのではないか?

「もちろん乗客も、不服があればあとから争うことはできます。ただし、『その当時、乗客自身が無害だったことを、その場ですぐに確認できたはずだ』と立証するのは、容易ではないでしょう」

航空機の性能や安全性が著しい進歩をとげ、事故率も大幅に下がったとはいえ、やはり空の安全を確保するためには、一人ひとりの協力が欠かせないという点に、変わりはないということだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

米国で高校生らが集団で旅客機の搭乗を拒否されるという出来事があり、国内外で話題になっている。

CNNの報道によると、6月上旬、米サウスウエスト航空のニューヨーク発アトランタ行きの便に、私立高校の生徒101人と教員8人が搭乗した。しかし、生徒たちは客室乗務員の指示に従わず、座席から立ったり、携帯電話を使用したという。

機長が注意しても聞かなかったため、最終的には109人全員が機内から降ろされた。その後、生徒らは同社が手配した別の便に複数に分かれて搭乗できたという。教員らは、指示を聞かなかったのは一部の生徒だけで、全員を降ろす必要はなかったと主張しているそうだ。

かなり異例の事態だったことがうかがえるが、日本でも2011年、出発前の機内で「(荷物に)爆弾が入ってるから気をつけてね」と冗談を言った男性が搭乗拒否になっている。では、このような「搭乗拒否」はどのような基準で判断されるのだろうか。旅行法や航空法の実務に詳しく、搭乗拒否についての論文も書いている金子博人弁護士に聞いた。

●「搭乗拒否」については機長に幅広い権限がある

「飛行機では『疑わしきは搭乗させない。降機させる』のが原則です。航空法では、航空機の乗客の搭乗を拒否したり、搭乗後に降ろしたりする『運送の拒否』については、機長に権限が集中しています(73条の3)。

航空機の安全を害するもの、人や財産に危害を及ぼすもの、機内の秩序規律に違反するものなどに対しては、機長は『降りろ』と要求できます。さらに、拘束したり、搭乗を抑止する措置をしたり、降機させたりする権利と義務を負っています。必要であれば、航空機を着陸させる権限も機長にあります。このような規定は各国にもあって、各種の国際条約も、それを前提にしています」

機長にそこまで大きな権限がある理由は?

「航空機がそもそも脆弱な運送手段だからです。安全運航は絶対ですし、機内は閉鎖空間で逃げ場もありません。機内の規律はとても重要で、乗務員の指示に従わないものは、そもそも乗せるべきではないのです。

たとえば『爆弾が入っている』などという発言があったとしたら、それがウソだと即座に、かつ確実に確認できない限り、降ろされるのは当然だと言えます。また、騒いだ高校生についても、『他の生徒が規律に従うかどうか』を、機長が即座に、かつ確実に確認できない限りは、降ろされてもやむを得ないでしょう」

降ろされた乗客には、不満が残るのではないか?

「もちろん乗客も、不服があればあとから争うことはできます。ただし、『その当時、乗客自身が無害だったことを、その場ですぐに確認できたはずだ』と立証するのは、容易ではないでしょう」

航空機の性能や安全性が著しい進歩をとげ、事故率も大幅に下がったとはいえ、やはり空の安全を確保するためには、一人ひとりの協力が欠かせないという点に、変わりはないということだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る