8783.jpg
「佐村河内守神話」のきっかけを作ったのは「五木寛之の推薦文」だった?
2014年07月16日 15時41分

「全聾(ぜんろう)の作曲家」「現代のベートーベン」と呼ばれ、多くのクラシックファンの人気を集めていた佐村河内守さん。その地位は今年2月、音楽家の新垣隆さんが「ゴーストライターをつとめていた」と告白したことで、一気に暗転した。

だが、そもそも、音大などで正規の音楽教育を受けたことのない佐村河内さんが、なぜ「現代のベートーベン」と称されるまでになったのか。新垣さんの作曲が素晴らしかったのが一因だとしても、それだけでは説明がつきにくいのだ。

「全聾(ぜんろう)の作曲家」「現代のベートーベン」と呼ばれ、多くのクラシックファンの人気を集めていた佐村河内守さん。その地位は今年2月、音楽家の新垣隆さんが「ゴーストライターをつとめていた」と告白したことで、一気に暗転した。

だが、そもそも、音大などで正規の音楽教育を受けたことのない佐村河内さんが、なぜ「現代のベートーベン」と称されるまでになったのか。新垣さんの作曲が素晴らしかったのが一因だとしても、それだけでは説明がつきにくいのだ。

●CD発売の4年前に「交響曲第1番」という本が出版されていた

佐村河内さんをスターダムに押し上げた原動力として、よく言及されるのが、2013年3月に放送されたNHKスペシャル「魂の旋律~音を失った作曲家~」だ。

この番組は、聴力を失った佐村河内さんが作曲のために苦闘する姿を描いたドキュメンタリーで、佐村河内さんが壁に頭を打ち付けるシーンなどが、強い印象を残した。だが、番組の一部が虚構だったことが判明し、番組を制作したNHKや担当ディレクターに非難が浴びせられた。

だが、NHKスペシャルとともに、「佐村河内神話」の形成に大きく寄与したマスメディアの作品があるという。それは、2007年11月に講談社から発売された佐村河内さんの自伝本「交響曲第1番」だ。

実は、佐村河内さんの代表曲とされた「交響曲第1番 HIROSHIMA」のCDが発売されたのは、2011年7月のこと。つまり、CDが発売される4年も前に「交響曲第1番」という名前の本が出版されていたのだ。

このことを問題にしたのは、今年6月に東京・阿佐ヶ谷で開かれた、佐村河内問題を検証するトークイベントの出席者たちだ。週刊文春で佐村河内さんを告発する記事を書いたノンフィクション作家の神山典士さんや、佐村河内さんと付き合いがあったというジャーナリストの塩田芳享さんが、7年前に発売された自伝本の果たした役割を解説した。

●五木寛之さんが推薦した「自伝本」がNスペのきっかけ?

イベントのなかで、神山さんは「交響曲第1番」のCD発売前から同名の本が存在していたことを指摘。そのうえで、「こんな立派な本が講談社から自伝として出ていた。これがその後の『佐村河内守ブランド』をつくる大きなきっかけだったんじゃないかと思います」と語った。

一方、塩田さんは、佐村河内さんの自伝本の帯に記された「推薦文」に注目する。そこには、作家・五木寛之さんの名前で、次のような言葉が書かれていた。

「もし、現代に天才と呼べる芸術家がいるとすれば、その一人は、まちがいなく佐村河内守さんだろう」

「これがすべての原点です。これで、全部の企画が通ったんですよ。たとえば、なんでNスペが企画を通したかというと、すべてがここから始まっていった。五木寛之さんは、佐村河内さんが作ったと言われている曲を絶賛したらしい」

塩田さんはこのように話したうえで、「彼を最初にモンスターに仕上げた最初の部分というのは、五木寛之さんと講談社だ」と持論を展開していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る